2025年6月よりNetflixで配信開始された、『KPOPガールズ! デーモン・ハンターズ(原題:KPop Demon Hunters)』というアニメーション映画をご存知ですか? ポップでクールな Kpopダンスや歌、さりげなくも印象的なロマンス、ほんのりと物語全体を覆うダークな雰囲気、そして歴史ある韓国文化や伝説のモチーフが絶妙に融合している魅力的な作品で、公開からあっという間に世界中で人気を博しています。物語のすみずみにまで韓国古来の神話性に満ち、それでいて印象的な場面では現代的な曲が力強く心を奪ってゆき、数々のシーンに出てくる韓国の民間伝承に根ざした深い意味の数々にすっかり夢中にさせられてしまいます。
とはいえ、韓国文化にまだ馴染みのない方は、「韓国の伝説的なモチーフや民間伝承についての知識がないから、物語をちゃんと理解できないかも…」とご心配かもしれませんね。でもご安心ください! この記事では、韓国古来の神秘的な概念や、それがハンターたちにどう反映されているのか、この魅力的な物語を紐解きながら、その文化的なバックグラウンドをわかりやすく紹介していきます。
それでは、『KPOPガールズ! デーモン・ハンターズ』の7つの秘密をご覧ください!
1. 『KPOPガールズ! デーモン・ハンターズ』はどんな作品?
物語は主人公は、ルミという1人の少女です。ルミは人気3人組K-POPガールズグループガールズグループのメンバーのひとりで、ミラ、ゾーイという他のメンバーとともに、昼間はスーパースターとして華やかなステージでファンを魅了しています。ですが夜の彼女たちには、別の顔があります──実は彼女たちは、「K-POPデーモンハンター」として、隠れた超自然的な脅威からファンを守る戦士なのです。
ある日、そんな彼女たちの前に最大のライバルとして、魅力的なK-POPボーイズグループが現れます。なんと彼らは、その正体を隠したまま活動するデーモンのアイドルグループなのです。音楽の世界でも、デーモンハンターとしての秘密のミッションの場面においても、ルミたちは試練に直面していきます。
作品の声優陣もとても魅力的です。ルミ役の声はアーデン・チョーがメインで務めながら、歌唱パートについては、この作品の主要曲の作曲も行なっている韓国系アメリカ人の作曲家・EJAE(イジェ)が担当しています。ミラ役はメイ・ホンで、歌唱パートはオードリー・ヌナ。ゾーイ役はジヨン・ユで、歌唱パートはレイ・アミが、それぞれ担当しています。
さらに、大御所俳優たちも作品に参加しています。最大の敵である恐ろしいデーモン・グィマ役は、あのイ・ビョンホンが務めています。ヒーラーであるハン役はダニエル・デイ・キムが、セリーヌ役はキム・ユンジンが、そしてジヌ役はアン・ヒョソプがを演じています。
こうした豪華なキャスト陣が、デーモンたちとの激しい戦いや、物静かな感情に訴えかけるシーンまでもを、ドラマチックで心に響く作品へと昇華しています。
2. グィマとデーモンたちの恐ろしくも切ない真実
物語の世界において、最大の敵は「귀마(グィマ)」です。これは他のすべてのデーモンたちのリーダーにあたります。韓国語において「귀(グィ)」とは「幽霊・魂」、そして「마(マ)」とは「悪霊・悪の存在」を意味しています。このグィマは単なる心のない怪物ではなく、しばしば人間の叶わなかった後悔や未練から生まれてくる、堕落した霊です。グィマはデーモンハンターたちが直面する他のデーモンたちを操る力を持ちあわせています。
デーモンたちは姿を変えることができ、人間の心にささやきかけて、その負の感情を糧としています。韓国のシャーマニズム(巫俗/ムイズム)では、こうしたデーモンのような存在が分かれ道や、森の中、廃屋などに住み着くとされています。作品の中では、グィマは恐ろしい存在であると同時に悲劇的にも描かれています。デーモンたちは、今は闇に飲まれてしまっているものの、かつては誰かの恋人で、親で、友人であったというのです。

3. 虎とカササギ──昔話のシンボル
『KPOPガールズ! デーモン・ハンターズ』では、韓国の昔話『호랑이와 까치(虎とカササギ)』が不気味な寝物語として登場します。韓国の民話では昔からよく、カササギ(까치)は吉報を知らせる鳥とされ、虎(호랑이)は猛々しいけれども必ずしも悪ではない守護者として登場します。鵲虎図(じゃっこず)などでも、両者は厄除けや守り神、縁起の良い組み合わせとして描かれています。
『虎とカササギ』は、大晦日に虎が村を徘徊しますが、カササギの絶え間ない鳴き声が村人たちに知らせ、村を救うという話です。『KPOPガールズ! デーモン・ハンターズ』の中でも、ハンターたちはカササギの鳴き声を聞くことでデーモンたちが近くにいることを察知するという場面が、何度もシンボル的に登場しています。
韓国では誰もが知る昔話を作品に取り入れることで、古い迷信と現代のストーリーテリングが融合し、ハンターたちの使命が、運命的で避けられない印象を与えています。
4. ルミ、ミラ、ゾーイ──ハンターたちの名前
『KPOPガールズ! デーモン・ハンターズ』の各ハンターの名前にも、実は深い意味が込められています。そして彼らが扱う武器にもまた、その性格や戦闘スタイルと、韓国の歴史や文化を反映しています。
「ルミ」という名前は、英語の 「luminary(光を放つ存在)」のように、光や輝きを連想させます。さらに漢字の「美(미)」は、文字通り「美しさ」という意味も持ち合わせています。彼女が操るのは「사인검(サインゴム、Sain-geom)」という武器で、別名「四虎の剣(Sword of Four Tigers)」とも呼ばれています。この伝説の武器は、韓国の神話において「守護」と「権威」の象徴とされていますます。ルミの規律正しく戦略的な戦い方は、この剣の持つ由緒ある伝説を反映しているようです。
「ミラ」という名前は、日本語でもそうなのですが、韓国語で「未来」を意味する「미래(ミレ)」に音が近く、その先見性や前向きさを思い起こさせます。彼女が使うのは「곡도(ゴクド、Gokdo)」という伝統的な韓国の長柄武器です。この武器は遠距離から正確に攻撃できるもので、ミラの忍耐力やタイミングの良さを表しているようです。(韓国の歴史的戦闘技術に深く根ざした武器としても知られています)
「ゾーイ」という名前は、は韓国語では「조이」と書きます。これは英語の 「Joy(喜び)」と同じ発音で、彼女の明るい性格を表現しています。さらに、ギリシャ語起源で「生命」という意味も持ち、そのエネルギッシュなキャラクターにぴったりの名前です。ゾーイはダガーとシャドーブレードの2つの武器の二刀流です。その戦闘スタイルは彼女の賢明さと適応能力の高さを象徴しており、かつ、韓国の伝統武術に見られる素早く精密な動きもよく表現しています。

5. 屋台のストリートフード
このように韓国の伝統文化をよく思い起こさせる物語ですが、視聴者たちを日常生活に引き戻すようにして、作品内ではハンターたちはの食事風景がよく描かれています。そこでは、キムパプ(김밥)、冷麺(냉면)、ホットク(호떡)、そしてキャラクターたちのお気に入りのカップラーメン(컵라면)などの料理が登場します。
映画内の各シーンをよく見てみると、かまぼこ串(오뎅)、スンデ(순대/血ソーセージ)、韓国風コーンドッグなどの屋台のストリートフードも登場します。こうした身近な食べ物たちは、危険に満ちたデーモンの世界との対比として、物語にほっとする存在感を与えています。(こうした韓国の美味しい屋台のストリートフードについて、こちらの記事でも色々とご紹介しています!)
「誰かと一緒に食事をする」というシーンは、韓国ドラマやミュージックビデオでよく見られるモチーフです。これは韓国のコミュニティ、信頼、そして人間関係を象徴しているものです。『KPOPガールズ! デーモン・ハンターズ』の作品の中でも、「たとえ暗闇の中でも人生は続いていく」ということを視聴者たちに思い出させる役割を果たしているといえるでしょう。
6. オリジナル楽曲『Golden』と『What it sounds like』
『KPOPガールズ! デーモン・ハンターズ』のオリジナル楽曲は単なるBGMではなく、作品を物語る役割を担ってもいます。例えば『Golden』という曲は決意や責任の重みを音楽で表現しつつ、ルミ、ミラ、ゾーイがデーモンたちと戦う苦悩を見せてくれています。「I’m done hidin’, now I’m shinin’ / Like I’m born to be(もう隠れはしない、輝いていくの/そう、そのままの私として)」といった歌詞は、暗闇から光へと踏み出す気持ちを見事に捉えています。
同じように、『What It Sounds Like』という曲も、「Truth after all this time, our voices all combined / When darkness meets the light, this is what it sounds like(これまでの時間を超えて、私たちの声はひとつになる/闇と光が出会って、この音になったんだ)」という歌詞を通して、彼女たちの責任感と苦悩と、そこから踏み出していく決意の気持ちの間のバランスを表現しています。
どちらの曲でも、「陰と陽」という韓国の哲学的概念を反映しており、闇と光の調和を際立たせているのです。
7. 暗闇の中の愛
恋愛要素のあるダークストーリーは、呪われたような愛なしでは成立しません。『KPOPガールズ! デーモン・ハンターズ』でも、ハンターたちのリーダーであるがミラが、かつて人間だったジヌというデーモンに恋をしてしまいます。
この切ない恋は、韓国の昔話『春香伝(Chunhyangga)』の悲恋を彷彿とさせます。作中の楽曲『Free』の歌詞、「We could be free, free / We can’t fix it if we never face it / Let the past be the past ’til it’s weightless(私たちは自由になれる/向き合わなければ解決できないんだ/過去は過去のままにさせておこう、その重みが消えてなくなるまで)」では、誰かを守りたいという気持ちと希望が表現されており、困難に立ち向かい過去の重荷を手放すことによって、キャラクターたちが自由と内なる強さを見つけられることを示唆しています。
『KPOPガールズ! デーモン・ハンターズ』の7つの秘密はいかがでしたか?
もしもまだこの作品を観ていないのなら、ぜひご覧ください! すでに観たことのある方も、この記事をご覧になってから再鑑賞することで、韓国の民話や文化が現代ダークロマンスとどのようにこの物語の中で融合されているのか、そしてそれがいかにこの作品を心踊るものとしているのか、あらためて再発見できることと思います。
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